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第6回2014.11.25更新

発達障がいのある大学生が抱える生活課題の明確化に向けての調査と指導方法についての研究

皆さん こんにちは!私は広島国際大学 医療福祉学科の津村 弘子と申します。
突然ですが、発達障がいという病気を知っていますか?私は発達障がいの学生さんとの関わりを通して研究をしています。

発達障がいの定義は・・・何らかの要因による中枢神経系障害のため、生まれつき認知やコミュニケーション、社会性、学習、注意力などに偏りや問題が生じ、現実の生活に困難をきたす障がいと言われています。


例えばこんな状況が、以下に紹介する本に記載がされています。

 

~本の紹介~

 佐々木正美(川崎医療福祉大学特任教授)、梅永雄二(宇都宮大学教育学部特別支援教育専攻教授)の監修のもと『大学生の発達障がい ひとりで悩みを抱え込まないで!』が、2010年7月に講談社から発行されました。

 

本の内容は、以下のような章立てになっています。

第1章   悩みをじょうずに相談できない

第2章      勉強面ではなにに、こまっているのか

第3章      生活面では、時間とお金が課題に

第4章      サークル活動にもなじめない人もいる

第5章      卒業・就職でつまずかないために

 

 当事者は、自分がなぜ他の人のように出来ないのか、疑問に思い、ひとりで悩んでいることが少なからずあります。その際に、具体的なことを伝えてくれるのが本書です。困っている人の特性について、イラストや短い文章でわかり易く表現してあり、具体的な事例を掲載しているので読みやすい本です。

 たとえば、第3章のなかに、「大学の用事が把握しきれず混乱する」という項目があります。そのなかでは、「まわりの予定にあわせられない」状況の背景に、「指示を聞きとることやメモをすることが苦手」、「聞き取れても、その指示に合わせて自分の習慣を変えることが、スムーズにできない」、「試験の実施時刻やレポート提出期限などを忘れてしまい、単位を落としてしまう」、「毎日の習慣を守って、大事な予定に参加しない」などがあると紹介されています。

 その特性をふまえた指示の出し方・伝え方、行動に移すための工夫が必要となります。

 さらに、当事者だけではなく保護者や教職員にも理解しやすいように、整理されているので、一人ひとりの個性に応じた支援方法の参考にできます。

 

出典 大学生の発達障がいひとりで悩みを抱え込まないで!58ページ
佐々木正美監修 講談社


津村 弘子 助手

医療福祉学部 医療福祉学科

研究テーマ:在宅介護における社会福祉援助技術の活用の調査研究、発達障がいと診断されている学生の介護実習における指導方法についての調査研究

主な発達障がい

(1)アスペルガー症候群と自閉症など

(2)注意欠如多動(性)障がい(AD/HD)

(3)学習障がい(LD)

 

* アスペルガー症候群と自閉症など 自閉症スペクトラム(ASD)あるいは広汎性発達障がい(PDD)・・・他人との意思や情緒の疎通に問題を持つコミュニケーションの障がい、常識が乏しく集団の中で適切に振る舞えない社会性の障がい、同じ状況や決められたことへのこだわりが強く柔軟な対応ができない想像性の障がい、この三つの全てを幼少期から継続してもち続けている障がいです。

 

* 注意欠如多動(性)障がい(AD/HD)・・・注意力に障がいがあるため困難を生じたり、多動や衝動的な行動をコントロールできない障がいです。注意力には持続すること、いくつかの対象に注意を分配できること、状況に応じて転換できることの三つの側面があり、それぞれの障がいから提出物が期限に間に合わない、とんでもないミスをしてしまう、遅刻が多い、複雑な課題をこなせない、やたらと物を失くす、また落ち着きがない、待てない、並べない、衝動的で余計な事をついしてしまうなどの問題行動を示します。分類では、注意力の障がいが主な人、衝動性や多動が主な人、両者がある人に分類されます。多動は成長すると目立たなくなることもあります。

 

* 学習障がい(LD)・・・定義は複数あります。主に医療分野では知能など他の能力に問題がないのに、「読む」、「書く」、「計算する」、のいずれか一つあるいは複数が障害されている場合をLearning Disorderとします。一方、教育分野では上記に加えて「聞く」、「話す」、「推論する」のどれか、あるいは複数が障害されている人も含みLearning Disabilitiesとします。「失読症」、「読字障がい」など純粋な学習障がいは発達障がいの中でもかなり多いのですが、「成績が振るわない、単に勉強ができない学生と思われ、発達障がいとは認識されにくく見逃されがちです。

出典 教職員のための障害学生修学支援ガイド 発達障害(2014)

 

平成16年12月に成立した発達障害者支援法第8条2項に「大学及び高等専門学校は発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする。」と明記されています。発達障がいを含め、多様な障がいのある学生を受け入れ学習支援するためには、学内の支援体制を構築し、個別の支援策を考え実行することが重要だと考えられます。

 

広島国際大学の学習支援体制

 現在本学では、学習支援が必要な学生は「障がい学習支援室」からの情報提供により、入学当初からの学習困難状況についての把握ができる体制を作り始めました。保護者や学生本人から情報を得て、学生一人ひとりの生活課題を見つけて支援することを目指しています。

 

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