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学部

第8回2015.2.13更新

保育学生の地域活動による実践的教育に関する研究

待機児童と保育者の離職

 今日、待機児童という言葉をよく耳にします。待機児童とは、保育所入所・利用資格があるにもかかわらず、定員が一杯であるために、入所できずに待っている児童のことです。共働き家庭が増えたことや、家庭環境の多様化などで、保育所を必要とする子育て家庭が増えています。広島では2013年度より、「働く女性応援プロジェクト・チーム」が立ち上がり、イキイキと働く女性を応援するために、待機児童を無くすべく、保育者の就職にも力がそそがれています。

 しかしながら、保育現場では保育者の離職率が問題となっています。離職理由としては、「仕事への適性がない」と感じていたり、「保護者との人間関係」や「仕事が多い」(加藤,2011;水野,2007)などが主たる理由のようです。また、保育者を目指す学生は、実習などで「保育技術の不足」や「人間関係」「多忙感・疲労感」などを感じることが多く(林,2012:大谷,2012)、卒業後は一般企業に就職する方も多いという現状があります。


光盛 友美 助教

医療福祉学部 医療福祉学科

研究テーマ:
1)子どもの健康に関する研究
2)子どもの虐待に関する研究

経験を積み、自信のある保育士へ

 保育者を志願してくる学生の多くは、「子どもが好き」「子どもとかかわる仕事がしたい」という声が一番の理由です。しかし、そのような学生も実際に子どもたちを前にした時に、「どうかかわっていいのかわからない」「どう声をかけていいのかわからない」という戸惑いを訴えます。現在育児中の保護者が、子どもとかかわる経験がほとんどないと指摘されているように、保育者を目指す学生も同様に子どもとかかわる経験が少ないといった実情があります。

 私は以前より、実際に地域の子どもたち・育児中の保護者とかかわる経験を積むことで、学生自身が、子どもとのかかわりに慣れること、保護者の話に耳を傾けられ、育児不安や育児ストレスについて理解できること、また、学生自身が自分の得意なことを伸ばしたり、不得意部分にチャレンジして、自信がつくことを目的に、地域で活動を行い、研究を行ってきました。研究結果としては、学生は子どもとのかかわりに自信をもてることと、保護者は自分の育児を他者に伝えることで肯定感情が高くなることを明らかにできました。以上のことから、上述のような経験を積むと、保育者としての自信につながり、離職も防止できると考えています。この研究を踏まえ、現在も本学部の保育学専攻の学生たちと、地域でのボランティアに参加しています。学生は経験を積み、自信のある保育士に成長すべくがんばっています。また、私自身もこの研究をさらに深めて行く予定です。

 

本学部・保育学専攻の学生が参加した「忍者ごっこのボランティア」(2014年秋)


参考文献

加藤光良、鈴木久美子(2011)

新卒保育者の早期離職問題に関する研究Ⅰ~幼稚園・保育所・施設を対象とした調査から~ 

常葉学園短期大学紀要(P.42、79-94)

 

林 富公子(2012)

初めての保育実習におけるストレスについての考察

園田学園女子大学論文集(P.46、241-253)

 

大谷彰子、平化恵美子(2012)

保育者養成における実習に対する課題と不安の変容

甲子園短期大学紀要(P.30、67-73)

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