チーム医療に強い人材を育成する医療系総合大学

学部

過去の記事はこちら

第9回2014.11.25更新

福祉とは、「誰でも助けを必要とする人を、誰でも助けられる人が助ける仕組み」

 私自身、大学卒業後にこの世界に入ったが、個人や地域社会を支援するおもしろい仕事をして給料をもらえるとは、何とも自分にピッタリの仕事だと思いました。この10年間の研究・教育・福祉実践のテーマは、次のとおりです。

 1番目は、「ホームレスと地域福祉」です。「福祉国家」と言われている日本で、1990年代の半ばから経済・社会が変動し、倒産、失業などによって、収入が途絶え、基盤となる家族が無く、人生を築く住居、収入や医療などを保障する社会保険、相談する友人や専門機関の社会関係を無くし、路上と屋根の下(ネットカフェなど)を行き来する不安定な生活を送る人々が、厚労省の調査によると、全国の殆どの県庁所在地に、2014年現在で約7500名(広島県65名)ほどいます。2003年時点の約2万5000名(広島県230名)から1/3に減少しましたが、依然として高齢・障害者と一部の若者が路上に残っています。路上脱却した人の中から、自分の辛い経験をふまえて困っている人を支援するグループができ(福祉コミュニティ)、ホームレス支援、災害支援などのボランティア活動をしています。3年生の専門演習ゼミでは、市民団体の夜回り活動に参加して、リーチアウト面接、相談援助の実際を体験しています。ホームレスという貧困者に出会ったことから、「子どもの貧困」に関心が向き「学校ソーシャルワーク」を教えています。

 2番目は、「福祉・介護人材確保対策」です。2006年頃から福祉・介護現場の低い労働条件が明らかになり、福祉・介護サービス事業所はモノ(建物、車など)、カネ(資金)を準備しても、ヒト(介護福祉士などの福祉・介護人材)・ジョウホウを確保できず、住民にサービス提供ができなくなる事態が見られます。そのため、福祉系大学・介護専門学校の教員と共に、広島県が福祉・介護人材確保施策を立てるよう協議を続け、現在ではプラットホーム「広島県福祉・介護人材確保等支援会議」が作られ、人材確保育成部会長として、国・県の従事者の処遇改善対策を提言しています。2014年度は、社会福祉法人経営者協議会と協同で「大卒の介護福祉士・社会福祉士の賃金は一般水準である」との仮説のもと、広島県の賃金実態調査をしており、今年は関心のある2年生がその集計作業に参加する予定です。

 

(近著)編著「福祉マンパワー・人材確保の体系と弊害」(日本社会福祉学会編『社会福祉学事典』丸善出版社、2014年)

岡崎 仁史 教授

医療福祉学部 医療福祉学科

img