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第10回2015.01.22更新

ポジティブ思考のソーシャルワーク

 ソーシャルワークとは、日本語では「社会福祉援助技術」や「相談援助」などと訳されます。ひらたく説明すると、生活のしづらさに直面した人の相談に乗り、社会福祉の制度やサービスを駆使するだけではなく、その人や家族、周囲とも協力して生活を支える活動のことを指します。

 私がソーシャルワークに出会ったのは大学生の時でした。その後20年近く、ソーシャルワークの教育・研究に携わっているのは、ソーシャルワークのポジティブ思考に惹かれているからです。

 例えば、ソーシャルワークには「ストレス」と「コーピング(対処)」という考え方があります。皆さんは、「ストレス」と聞くとマイナスのイメージを持っていませんか?しかしソーシャルワークでは、「ストレス」はそれに対処する力を生み、発揮するチャンスととらえることがあります。また、ストレスに直面し対処できなくても、その人には乗り越える力や状況を変え、成長していく力があると考え支援を行います。さらに、虐待や暴力、病気や障がい、偏見、差別、孤立など、生きづらさを抱えてきた人を「これまでの生活を生き抜いてきた人」ととらえ、その人の経験や知恵、存在を尊重する姿勢が、ソーシャルワークには求められるのです。

山口 真里 講師

医療福祉学部 医療福祉学科

ストレングス視点をもつソーシャルワーカーの養成を目指して

 こうした考え方を背景にして、近年のソーシャルワークでは、支援の対象となる人に対してストレングス視点(ストレングスに着目する視点や考え方)を向けることが強調されています。ストレングスとは、能力や強さ、度量や願望、愛情や経験、資源、知識、文化など、すべての人や環境がもつ「強み」を示す言葉です。私のこれまでの研究は、生きづらさに直面した人がストレングスを生かして新たな生活を営む力を発揮していけるような支援方法を明らかにすることでした。

 しかしこの支援も、ストレングス視点を持つソーシャルワーカーがいないと始まりません。そこで現在では、ソーシャルワークの講義や実習のなかで、学生さんがストレングス視点を身につけられる教育方法を研究しています。具体的には、講義のなかでどのような教材や課題を用いればストレングス視点を身近に体験し習得できるか、また福祉施設機関の実習での出会いや体験で得た学びを実践力に結び付けるために必要な指導とは何か、などを日々模索しているところです。私の講義のなかで、学生さんが自らにストレングス視点を向け、自分の中のソーシャルワーカーとしての強みを発見してもらえることから始められたら・・・と考えている今日この頃です。

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