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第3回2012.11.13更新

関前地区に「地域力」を学ぶ

秋祭り、前日。

2012923日(日)、愛媛県今治市関前地区の岡村島では、姫子隝(ひめこじま)神社の秋の例大祭が盛大に行われました。秋の収穫を願い、御神体を乗せた神輿が獅子舞をお供に島中をねり歩きました。お囃子の笛と太鼓の音に合わせて、色鮮やかな赤白青の衣装を纏った獅子が舞を披露し、祭りに華を添えました。

 私の担当する地域福祉ゼミの学生・大学院生、今治市社会福祉協議会関前支部で社会福祉援助技術現場実習中の実習生ら8人と共に、この島を挙げての秋祭りに準備段階から参加し、伝統行事を取り仕切る住民組織や地域の文化・風習を学ぶとともに、地域づくりにおける伝統行事の意味について思いを巡らせました。

 秋祭り前日、いよいよ本格的に祭りの準備が始まりました。今年の秋祭りの運営を担当する当人さんを中心として、神社を清めたり、幟を立てたりと準備が進みました。氏子総代長さんのご自宅では、餅まきのためのお餅1,163個(!)にくじを入れる作業をお手伝いしました。また、前夜祭として、午後8時頃から、姫子隝神社の境内において獅子舞や巫女の舞が奉納されました。多くの人々が訪れていましたが、祭りのために帰省しているとおぼしき若夫婦に連れられた子どもたちのはしゃぐ姿が印象的でした。

渡辺 晴子 准教授

医療福祉学部 医療福祉学科

岐阜大在学中にスウェーデン・ルンド大社会福祉学部に留学。教職志望だったが、この留学をきっかけに福祉分野における地域づくり、人づくりに関心を持つ。06年大阪府立大大学院社会福祉学研究科修了。07年広島国際大医療福祉学部着任。岐阜県出身

関前三島の風光明媚な景色

神輿の担ぎ手がいなくなる。

当日は午前7時から準備に入りました。午前8時半、御神体を神輿に乗せる儀式が行われました。そして、島中を神輿が巡り、地区ごとに神輿を祀り、獅子舞が披露されました。各地区では、簀巻きやかまぼこ、ゆで卵、たこ天、せんざんき(鳥の唐揚げ)、もぶり飯(まぜご飯)などが振る舞われました。男子学生たちは、神輿の担ぎ手として大活躍をしました。高齢化の進む岡村島では、地区によっては神輿の担ぎ手が確保できず、数年前に神輿を乗せるための台車を購入したそうです。しかし、総代さんのお一人はできれば台車は使いたくないと言われました。「まるで葬式。寂しいなるんよね。」男子学生らの頑張りもあってか、この日、台車は一度も登場しませんでした。また、女子学生たちは、当人のまとめ役である当頭さんのご自宅で、料理の準備などをお手伝いしました。総代さん、当人さんたちのために、お昼と夜の宴席を設けていました。当頭さんのご厚意で、私たちも驚くほど豪華なお昼をご馳走になりました。午後6時過ぎ、神輿が宮入りをして、祭りは無事に終了しました。

学生も神輿担ぎを手伝いました

過疎・高齢化の進む地域。課題は、域外との交流。

関前地区の人口は530人、そのうち65歳以上人口が319人(高齢化率60.2%)、19歳以下人口31人です(201010月現在)。過疎・高齢化に関しては、他地域の一歩先を行く地域といえます。しかし、この秋祭りに参加して、関前地区の持つ「地域力」の高さを改めて実感させられました。氏子総代、当人といった祭りの運営組織の機動性、各地区の自治会の個性・独自性から、地域社会を動かす力の原点を学んだ思いです。そして、これからの関前地区におけるコミュニティのあり方として、いかに地域外と交流し、関前地区の「地域力」を維持・向上していくかは一つの課題であるように感じました。

関前地区の秋祭りに参加した面々

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