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「広国広げ隊(学生広報)が高校生にお薦めする本1」

2022年1月24日

広島国際大学のことをみんなにもっと知ってもらうために結成された学生広報チーム、
その名も「広国広げ隊」が高校生のみなさんに本を紹介します。
今回はテーマを決めず隊員がそれぞれ自由に本を選び、頑張って書評の文章を推敲しました。
書評を読んで紹介された本に興味が湧きましたら、ぜひ読んでみてください。

 

 

 

「3日間の幸福」書評(三秋縋著)

この小説は、自分の残りの人生を売ったクスノキと、寿命を売った彼を見守る監視員ミヤギとの物語である。

主人公であるクスノキは平凡で退屈な日々を送っていたが、ある日古書店で、「寿命を買い取ってくれる店」の話を耳にする。運命の糸に導かれるようにその店を訪ねたクスノキは、そこで自分の寿命について衝撃的なことを聞かされる。余命が30年であり、その間、何をやってもうまくいかない、というのである。そのため、彼の寿命には「一年一万円」という、最低買い取り価格がつけられてしまう。

悲観した彼は、寿命のうち三ヶ月だけを残し、残りの寿命すべてを売ってしまう。最後の三ヶ月を楽しく過ごそうとしたのである。ところが、店で言われたとおり、何をやってもうまくいかない。

そんなとき、彼はミヤギと出会う。彼女は、寿命を売り払った人が自暴自棄になって問題行動を起こしたりしないように、彼らにつけられる“監視員”の一人である。クスノキは彼女と交流する中で、自分の人生の価値について考え直し、残りの人生を生きる。

人は「死すべき存在」である。だからこそ、人生は輝くことができる。自分の寿命を意識したときにはじめて、主人公は、路傍に咲く野花の美しさや、夕日の美しさに気づき、それらが当たり前のものではなく尊いものであることを知る。人生の価値とは何なのか、そして幸せとは何なのか、改めて考えさせられた。

(藤澤加帆)

 

 

コンビニ人間/村田沙耶香

「普通の人生」

この小説の主人公は、ちょっと変な女の子です。例えば、子どもの頃、飼っていた小鳥が死んだときに、お墓を立てるのではなく、焼き鳥にして食べようとしたことがありました。小学校で同級生が喧嘩をしているときには、スコップで殴って止めようとしました。行動や思考が普通ではないのです。当然、変わり者だと周囲から疎まれる存在でした。

そんな彼女にも、自分の居場所だと思える場所がありました。コンビニです。彼女は、コンビニでアルバイトとして働いているとき、自分も社会の一員であると感じることができました。

とはいえ、それは所詮アルバイトです。しかも彼女は、18年もアルバイトとしてコンビニで働いているのです。当然、周りの人は、彼女に企業への就職や結婚を勧めました。彼女は自分の未来についてどう決断したでしょう?

私はこの本を読んで、普通の人生と、他人に反対されても自分の生きたいように生きる人生の、どちらが良いのか考えさせられました。普通の人生とは何でしょうか。私が思う普通の人生とは、高校・大学を経て就職し、30代になると結婚し子供を作る。そして寿命が来たら死ぬ、というものです。

私自身、高校生の頃に、進路のことで大変悩みました。結局どうしたかというと、周囲の人から示された道に進みました。ですが、私の場合、それは必ずしも正しい選択ではありませんでした。なぜなら、その進路は私にとって楽しいと思えるものではなかったからです。

もちろん、周囲から勧められた進路がいつも間違っているわけではありません。正しいときもあるでしょう。いずれにしても、自分が楽しいと思えるような選択をすることが、後で後悔しない人生を送ることにつながるのではないか。この本を読んでそう思いました。

(広本聖那)

 

 

仕事も人間関係もうまくいく 放っておく力(枡野俊明)

本書は曹洞宗徳雄山建功寺の住職である桝野俊明さんによって書かれた本である。仕事や人間関係がうまくいくためには、「放っておく力」が大事だ、という内容だが、「放っておく」という言葉には、「無関心」や「放棄」というイメージがあり、前向きな印象はもっていなかった。しかし、筆者がそれを一つの能力として捉えていることに驚き、自分でそれを実戦してみることにした。インスタグラムを消すことにしたのである。

SNSが発達している今日、ネットへの投稿を通して、自分の生活を自慢したり、他人と比較して一喜一憂する人が多いのではないだろうか。自分も例外ではなかった。そのため、インスタグラムがないと、友達の行動が知りたくてうずうずした。

ところが、1日経つと、そんな気持ちも消え失せた。うずうずする気持ちを「放っておく」ことができるようになったのである。

インスタグラムのない生活は、意外なことに、充実していて楽しいものだった。今までは、友達が誰と遊んでいるか、といったことを知りたかったが、いざ知ることができないとなると、逆に楽になった。友達の行動を知りたいという気持ちがストレスになっていたのだと気づいた。他人のことを上手く放っておく力は自分を守るためにも大切なのだと実感した。

インスタグラムを消すと、友だちとの会話についていけないのではないかと心配だったが、本書にはその対処法も載っていた。「堂々と知らないと言う」。知りたいと思ったら聞けばいい。ただそれだけだった。

放っておく力をもつ人は強い。この本はそれを教えてくれた。

(相原唯乃)

 

 

上手に傷つくためのレッスン/香山リカ

本書のテーマは、精神的に傷ついたとき、その傷とどう向き合えばいいのか、ということである。

「心の傷」と言っても様々である。友だちと些細なことで言い合いになって傷つくこともあれば、インターネットで匿名の誰かに悪口を書かれて傷つくこともある。うつ病になるほど心を病むこともある。私たちは色んなことで傷つく。

自分を他人と比較して傷ついてしまう場合を取り上げてみよう。自分を誰かと比較して「私はこの人より劣っている」と思ったときに、私たちはつい「自分はダメな人間なんだ」と傷ついてしまう。

もちろん、そのコンプレックスをバネにしてやる気を奮い立たせることができる人もいるかもしれない。だが、そういうエネルギーは、疲労や挫折感に突き当たって、長続きしないことが多い。

著者は、自分を他人と比較すること自体は悪いことではないが、「私はダメな人間だ」と傷つく必要はない、と言う。あくまでも私は私であって、他人ではないからだ。

それでも傷ついてしまったときは、そこからいかに速く立ち直るかが大事だと著者は言う。傷ついてしまったこと自体はもう仕方がないからだ。受けた傷から速く立ち直る仕方を身につけることによって、傷ついた心を緩和するだけでなく、傷つけた出来事がもつ「とげの鋭さ」を鈍くすることができる。

本書は心のことを書いているが、専門用語はほとんどなく、心理学の知識を持っていなくても読むことができる。心の傷の対処法を学ぶことができるので、自分が傷ついたときにそれを応用することができて面白い。

(匿名希望)

 

 

『世界の偉人×賢人の知恵 すごい名言100』(遠越段著)

本書は、タイトルが示すとおり、著名な偉人たちの名言集である。彼らの言葉は、時代や国を超えて心に響く。

例えば、勝海舟は「世間は生きている。リクツは死んでいる」という言葉を残した。世の中は常に変化し続けているので、これまでの常識や理論がいつも通用するとは限らない、という意味である。戊辰戦争の時に、新政府軍による江戸城総攻撃を目前にして、勝海舟が無血開城を実現したことを思えば、常識にとらわれない彼の思想を凝縮した言葉だと言える。

アメリカ合衆国第32代大統領のフランクリン・ルーズヴェルトは「ただお金を持っているだけでは幸せにはなれない。本当の幸せというのは、人生に目標、目的を掲げ、それを達成した喜びの中に、そして、そのために自分創意工夫してがんばり抜く過程の中にあるのだ」と語った。お金がたくさんあれば、自分の欲を満たすことができる。だが、果たしてそれは本当の幸せだろうか。家族や友人と良い関係を築こうとしたり、あるいは自分の仕事を充実したものにしようと努力するプロセス、そしてその努力が報われたときの喜び、それこそが本当の幸せだと、ルーズヴェルトは言っている。

偉人たちの言葉はいずれも含蓄に富む。私たちが人生の岐路に立ったときに、きっと羅針盤のような役割を果たしてくれるだろう。

(水野渚砂)

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