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学科内の学生広報団体「広国広げ隊」のメンバーがOBにインタビューしました!

2023年3月13日

広国広げ隊は学生有志の団体で、心理学科や心理学に関わるテーマを取り上げて記事を作成し、HP・SNSで情報発信しています。

今回は2015年度の大西ゼミ卒のOBで、児童発達支援・放課後等デイサービスれもん西条東校の校舎管理者および児童発達支援管理責任者である柏尾俊樹さんにインタビューをしました。れもんの活動や,心理学の活用,れもんを立ちあげたきっかけなどについて伺いましたのでご覧ください。

 

①れもんで行っているレッスンプランの一つに「うそ日記」というプランがありますが、どんな内容ですか?

子供に嘘の内容の日記を書いてもらうというものです。なぜ嘘の内容を書くのかと言うと、子供達は自分のことだと書きづらかったり、簡潔に書くことが難しいと思うからです。でも嘘の物語ならもっと膨らませて書いたり、こういう登場人物が居たら、といったように「たられば」で書きやすくなります。

日記を書くのが下手な子や文章にまとまりが無い子は、こういう「嘘」という建前を通して書くことで「あれ?ちゃんとできるじゃん!」「これを自分に置き換えればいいんだ」と気づき、文章の練習の一環になります。

嘘日記では、最初は好きなように書きたいことを書いてもらいますが、3~4回目になると飽きてしまいます。そのときは私たちの方から、「もしも空を飛べたら…」「桃太郎の鬼がめちゃくちゃ強かったら…」といったお題を出して書いてもらいます。

 

②他事業所とは違い、個別対応にしているのはなぜですか?

他の事業所は集団が多く、個別でやっているところが少ないからです。それなので、他事業所との差別化を図るというのが理由の一つです。

また、集団だと年齢が違ったり、元気だったり静かだったりというように特性が違う子が一緒に活動することになります。そのやり方に療育的効果が無いとは言いませんが、1対1でやった方が良いこともあると思います。さきほどの「うそ日記」も、他の子と一緒にやることもできるのですが、そうすると元気な子は先生と話して、静かな子は黙々と一人でやるようになってしまいがちです。1対1の方がその子に合った療育ができるという面もあり、個別対応を行なっています。

 

③子供と接するときに意識していることや気をつけていることはありますか。

いくつかありますが、1つは対等な関係を築くことです。障害や特性の有無に関係なく、子どもは、子ども扱いされることや特別な配慮をされることを望んではおらず、「普通に接してほしい」という感覚があると思います。そのため、例えば子供とゲームをするときに、先生側がわざと負けるということはせず、対等に接するように意識しています。

もう1つは、「普通」という言葉をなるべく使わないことです。「普通」というと「平均」をイメージすると思いますが、世間一般のいう「普通」はレベルが高いと感じます。皆さんが当たり前に思っている「普通」は、平均値であって中央値ではありませんよね。個々によって「普通」は違いますので、子供たちの特性を尊重して接するようにしています。

 

④乳幼児など年齢が低い子供にはどのように接していますか。

相手と対等の立場で接するように心掛けています。どの利用者に対しても、一緒に遊ぶお兄さん、お姉さんのように対等の立場で接するように心掛けています。利用者の方が喜んでいる遊びは何度も繰り返し、飽きるまでやります。

1)1人で遊べる,2)他人と遊べる,3)指示が聞けるという段階のうち、3)を鍛えるように努めています。また、一人一人に合わせて簡単なことからコツコツと一緒にやっていきます。

 

⑤お仕事をされている中で、心理学の知識を活用できたと感じる場面はありますか。

大学在学時の学んできたことがトータル的に活用されました。例えばコミュニーケーション心理学では、人と接する際に言語だけでなく、相手の症状や一つ一つの行動を見てそこから必要な対応をします。

また、ノンバーバルコミュニケーションも働いている上で役に立っています。

 

⑥福祉分野の仕事に興味を持ったきっかけや理由を教えてください。

大学を卒業後、高校教諭として働いていたのですが、そのときに夏に特別支援学校から転校してきた高校3年生の生徒がいました。転校の理由は、高校卒業して大学の入試資格を得るためです。特別支援学校と高校では勉強の内容が異なるため、卒業は難しいだろうと思っていたのですが、勉強に関しては習う機会が無かったからできないというように見えたのです。 生徒の親御さんによると、小さい頃から扱いが難しいところがあったため小学校に上がるときに特別支援学校に通うことにしたとのことでした

そのときにもし適切な知識や福祉の助けがあれば、この子は今の苦労をせずにすんだのではないかと思いました。そのような体験もあり、自分の学んだ心理学の知識を生かすことで困っている人の力になれるのではないかと考え、福祉職に転職しました。教職も人に感謝されてお金をいただく仕事でしたので、同じように福祉職で誰かに感謝されてお金をいただくのも悪くないなと感じたことも、福祉分野に興味を持つきっかけになりました。

 

⑦就職後に独立をして「れもん」を立ち上げたとお聞きしたのですが、独立を決断したのはいつですか?

高校教員として1年10か月ほど勤めた後に転職して、3年ほど福祉の現場で働き、それから独立というルートになるのですが、転職して2年目の頃から独立したいという思いはふんわりとありました。理由は、当時の職場の方針に対して「自分だったらこうしたい」という思いがあったことと、役職が上がるにつれて収入の限界が見えたからです。また、今の妻と結婚して子供ができたことが分かり、子供が生まれてからだと、しばらく転職は難しいと考え、これが独立の最後のチャンスだと思いました。このように独立してみたいという気持ちとタイミングが合わさって、独立に至りました。

 

⑧会社を経営していて苦労したことは何ですか?

企業当初のスタートアップ時期です。最初は不安なことも多かったので、様々な事態を想定して、できることを思いついたらすぐに行動し、知識を得るためにいろいろ調べました。

 

⑨今後の展望や課題はありますか?

まだ知識や経験が不足しているため、手間取ったりミスをしたりしてしまうことが課題です。経験不足がゆえに「もっとよくできたのにな」と思う部分がいくつかありますが、これは恐らく時間が解決してくれる問題です。

今後の展望は、会社を大きくすることです。会社の設立時に,東広島に事業所を3つ作ることを目標に掲げ、社員を雇うときにも同じように言ってきたので、まずはそれを実現したいと思っています。大企業にしたいというわけではありませんが、5,6人ではなく、10人から20人くらいの会社になっていけばいいなと思います。現在では、療育をしたいという問い合わせがあっても断らざるを得なかったり、1年待ちや2年待ちになったりしてしまうということも実情としてあるので、事業所としては足りていない感覚があります。そういった子どもたちの手助けができればと思っています。

 

心理学科3年 友利優花、坂本莉奈、山田祥子
心理学科2年 六重部咲

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