2012年10月03日

山崎研究室

1.研究の紹介

精神看護学領域における研究・教育を行なっています。
ここでは行なっている研究の中から、看護師のメンタルヘルスについての研究と、
精神障害者の自立支援に関する研究の2つの視点から研究結果を一部紹介します。

 

1)看護師のメンタルヘルスに関する研究

看護師はやりがいのある職業ですが、一方でストレスが多い職業の1つとされ、
バーンアウト(燃え尽き症候群)やうつ傾向等メンタルヘルスの低下が問題視され続けており、
看護師が増員されてきている現在でもその傾向は持続しています。
バーンアウトとは単に慢性的な疲労を感じる(情緒的消耗感)だけではなく、
仕事の達成感が得られなくなったり(個人的達成感の減少)、
患者さんに優しく接することが出来なくなる(脱人格化)といった症状も含んでおり、
よい看護を提供するためにはバーンアウトの原因を理解し、
その減少に取り組んでいく必要があります。

 

バーンアウトの原因は主として個人的要因と組織的要因に大きく分類されますが、
ここでは組織的要因とバーンアウトとの関連に焦点をあてた研究結果の一部を紹介します。

 

(1)病院規模とバーンアウトとの関連

 

ベッド数1000床以上の病院(大規模病院)と約350床の病院(中規模病院)、
約150床の病院(小規模病院)のバーンアウト傾向を比較したところ、
規模が小さいほどバーンアウトが強い傾向がみられました(表1)。

 

 

(2)看護単位とバーンアウトとの関連

 

バーンアウトを看護単位ごとに比較したところ、
所属によってその傾向が違っていました。
内科病棟や外科病棟、周産母子センターではバーンアウトの中でも情緒的消耗感が強く(図1)、
内科病棟やICU、精神科病棟では個人的達成感が有意に減少していました(図2)。

 

 

(3)精神科病棟におけるストレッサーとバーンアウトとの関連

 

面接調査及び因子分析にて精神科病棟におけるストレッサーとして7因子が抽出されました。
これらのストレッサーとバーンアウトとの関連について検討した結果、
「看護介入の困難さ」がバーンアウトの中の脱人格化や情緒的消耗感の要因としてあげられました(表2)。

 

 

以上、組織的要因とバーンアウトとの関連について簡単に研究結果を述べましたが、
バーンアウトの要因はそう単純ではなく、
病院規模の違いという内訳には経営方針、職場風土、
看護師の経験年数や年齢・婚姻率・性格特性等の個人要因等様々な要因が関連してきます。
さらに、同じ看護単位でも患者さんの特徴や公的病院か個人病院かというような要因もまた影響します。
様々な要因が複雑に絡み合ってメンタルヘルスに影響を及ぼしていることを理解しつつ、
その複雑さを少しずつ解明すべく研究しているところです。

 

[関連文献]

 

山崎登志子、齋二美子、岩田真澄 精神科病棟における看護師の職場環境ストレッサーと
ストレス反応との関連について、日本看護研究学会雑誌、25(4)、78~84、2002
山崎登志子、伊藤幹佳、長谷川博亮 看護師におけるバーンアウト傾向と対人葛藤との関
連-ユニット間の比較を通して-、宮城大学看護学部紀要、6(1)、51~59、2002
山崎登志子、堀毛裕子、大江篤志 ベテラン看護師のストレス過程に影響する要因の変化
と対処行動、日本ヒューマン・ケア心理学会、6、2004
菊池麻衣子、山崎登志子 新卒看護師の離職願望と精神健康度 -就職前から就職後の変化を通して-、日本看護科学学会、28、2008
上田智之、山崎登志子、糠信憲明 看護師の感情労働とバーンアウト傾向との関連 -一
般科看護師と精神科看護師との比較-、日本看護研究学会、36、2010
高橋幸子、斎藤深雪、山崎登志子 精神科看護師のバーンアウトの要因と情緒的支援の有効性に関する研究、ヒューマン・ケア研究、11(2)、59~69、2010

 

2)精神障害者の自立支援に関する研究

近年障害者のノーマライゼーションに関する考え方が推進され、
精神障害者においても社会参加や地域での自立した生活が重要視されてきています。
また、社会復帰施設の目的や意義について多くの検討がなされていますが、
施設の利用者側の視点にたった研究は少なく、
精神障害者自身が何を目的として社会復帰施設に通所しているかについては必ずしも明らかになってはいません。
ここでは社会復帰施設に通う精神障害者自身の通所目的を明らかにすることを目的とした研究結果を一部紹介します。

 

最初に、小規模作業所に通所する精神障害者の通所目的について明らかにする目的で面
接結果に基づいた質問紙調査を行ない、
その結果を因子分析したところ、5つの通所目的が抽出されました(表1)。

 

次に、これらの通所目的を男女で比較したところ、
男性の方が女性より「精神の安定を求める」目的で通所している人が多いことが分かりました(図1)。
就労意欲が女性より男性の方が高い傾向にあることや男性通所者は仕事に就くことを主な未来目標としているとされることから、
男性では病状を安定させ就労につなげるという意識が働いていると考えられます。
一方、女性は男性に比べ「作業への取り組みを求める」目的で通所している者が男性より多いという結果でした(図2)。
女性は男性より就労意欲が低い傾向にあるという結果や、
女性通所者は趣味を持つことを主な未来目標としているとされることから、
女性の多くは作業への取り組みを就労に結びつけるというより、
作業という活動を対人関係や楽しさを得る手段ととらえていると考えられます。

 

 

[関連文献]

 

山崎登志子、久米和興 精神障害者小規模作業所への通所目的と自立援助についての一考
察、日本看護研究学会雑誌、23(4)、19~29、2000
佐藤美咲、菅野寛、山崎登志子 グループホームで生活している精神障害者の「居場所」
について、北日本看護学会、6、2002

 

2.山崎ゼミ生の修士論文・卒業研究テーマ一覧

学部卒業生および大学院修了生の論文テーマを紹介します。

 

 

広島国際大学 看護学部看護学科 教授 山崎 登志子

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