新型コロナウイルス肺炎に対する漢方治療案を掲載しました(漢方の臨床, 67巻, 585-591, 2020).

現在、新型コロナウイルスによるパンデミックが起こっており、漢方診療も試みようとされているが、この新型コロナウイルスのパンデミックは始まったばかりで不明な点が多く、有効な漢方はまだわかっていない。今後多くの研究によって病態、治療などがわかり、漢方治療の経験の蓄積、治験などもされて解明されていくであろう。現時点では、過去に起こったインフルエンザウイルスによるパンデミック「スペインかぜ」に対して大変有効であったと伝えられている漢方治療を活かした治療を考える必要があろう。論文では、急速で重篤な経過をとり、そして致死的になることのある新型コロナウイルによる肺炎に対する漢方治療を中心に記載した。

「スペインかぜ」を3タイプに別けて漢方治療を行い、この治療が大きな効果を示したと言われる。その3タイプは、①胃腸型、②肺炎型、③脳症型で、この3型に対応した漢方を選び治療した。胃腸型には香蘇散(香附子、蘇葉、陳皮、甘草、生姜)を主として、これに茯苓、白朮、半夏を加えた処方を活用し、肺炎型には小青竜湯(半夏、甘草、桂枝、五味子、細辛、芍薬、麻黄、乾姜)に杏仁、石膏を加えた方剤を、また高熱のため脳症を発するものには升麻葛根湯(葛根、芍薬、升麻、甘草、生姜)に白朮、川芎、細辛を加えた処方を運用した。 また、柴葛解肌湯、小柴胡湯桔梗石膏、柴陥湯についても述べた。