本学部5年の高橋由さんと川井健太郎さんが、「平成30年度 日本薬学会・中国四国支部 学生発表奨励賞」を受賞しました。昨年11月10日、11日に開催された日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会主催の中国四国支部学術大会での口頭発表を審査し、今年1月に贈られたものです。先日、宇根学部長から表彰状を手渡した模様を掲載しましたが、2人が評価された発表内容をご紹介します。

 

有機合成化学研究室(指導教員 池田潔教授)所属の高橋さんが発表したテーマは、「ヒトパラインフルエンザウイルス検出のための新規蛍光イメージング剤の開発」です。インフルエンザウイルスの早期治療のためには、感染初期のウイルス検出が不可欠です。近年注目されているのは、紫外線を当てるだけでインフルエンザウイルスを光らせ簡単に検出できる診断薬「蛍光イメージング剤」です。高橋さんは、インフルエンザウイルスの代表的な治療薬「ザナミビル」(商品名リレンザ)の構造の中でインフルエンザウイルスと結合する際に大きな働きをするグアニジル基に着目。グアニジル基を含むシアル酸と蛍光色素を結合させた新規診断薬を開発し、この診断薬が特に小児に呼吸器系の疾患を引き起こすヒトパラインフルエンザウイルスの早期検出に有効であることを証明しました。

 

高橋さんは「インフルエンザウイルスには変異型が多いので、研究でさまざまな型のウイルスを迅速かつ高感度に検出できる診断薬を開発できればと考えています」と意欲を燃やしています。

 

一方、有機薬化学研究室(指導教員 柳田玲子教授)に所属する川井さんは、「超原子価ヨウ素試薬を用いる9-スピロフルオレン化合物の合成」をテーマに発表。特定の化学反応を引き金にタンデム反応(ドミノ倒しのように次々と化学反応が連鎖すること)を引き起こし、精神安定剤にみられる構造を持つ9-スピロフルオレン化合物を一度の操作で効率的に合成する新しい反応の開発に成功しました。タンデム反応の効率化は、医薬品の開発にかかるコストや手間の削減につながるだけでなく、環境への負荷も減らすことができます。

 

「使用する試薬の選択や試薬の加え方次第で、結果が変わってくるのが、この実験の面白さです」と、川井さんは有機薬化学領域の魅力を語ってくれました。

 

化合物を分離する高橋さん

新しいタンデム反応の進行具合を確認する川井さん

広報室