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内部放射線治療

第1章 体の中からの放射線治療

            内部放射線治療

            特徴

第2章 高線量率小線源治療

            高線量率用小線源

            内部照射用放射線治療装置

            アプリケータ

            照射法

第3章 低線量率小線源治療

            低線量率用小線源

第4章 非密封小源治療

第1章 体の中からの放射線治療

内部放射線治療

放射線治療には、体の外から放射線を照射する外部放射線治療と、放射線を出す物質を体の中に入れて放射線を照射する内部放射線治療があります。放射線を出す物質を放射性物質といいます。

 また、内部放射線治療は、カプセルなどに密封された放射性物質を用いる治療法と、密封されていない放射性物質を使用する治療法に分けられます。カプセルなどで密封された放射性物質を密封放射性物質、密封されていない放射性物質を非密封放射性物質と呼んでいます。密封放射性物質を用いた治療を密封小線源治療、密封されていない放射性物質による治療を非密封小線源治療といいます。

 さらに、密封小線源治療は、短時間で放射線を照射する高線量率小線源治療と長い時間をかけてゆっくり放射線を照射する低線量率小線源治療があります(図1.1)。

特 徴

 内部放射線治療には、外部放射線治療と比較して次のような特徴があります。

・悪性腫瘍の内部やすぐ近くに放射性物質を置くこと(集めること)ができます。

・悪性腫瘍を取り囲む正常組織にあたる線量を大きく減らすことができます。

・呼吸や生理的な内臓の運動によって腫瘍の位置が変わっても放射線照射は影響を受けません。

・高線量率小線源治療では、照射時間は短時間で終わり、苦痛が軽減されます。

・低線量率小線源治療では、放射線を悪性腫瘍に長時間浴びせることができます。

第2章 高線量率小線源治療

高線量率用小線源
この治療法は、主に、食道・気管支・胆道・子宮・直腸などの管状の臓器に発生した悪性腫瘍に行われます。方法として、あらかじめ管状の臓器内に小線源を通すチューブを挿入します。その後、直径約1mm、長さ約5mm程度のカプセル内に小線源(図2.1)をそのチューブの中に入れていきます。管状の臓器以外にも舌や前立腺などの組織の治療に用いられます。この場合には、針状や種子状の形状にした小線源を細いチューブを通して組織に直接刺します。

内部照射用放射線治療装置
体の中への小線源の挿入は専用の放射線治療装置を使用し、遠隔操作で行われます。専用の放射線治療装置は遠隔操作式密封小線源治療装置(図2.2)と呼ばれています。装置名の英語の略から高線量率小線源治療のことをラルス(RALS)ともいいます。遠隔操作により小線源を体内に挿入するため、医療従事者は被ばくすることはありません。このため比較的線源強度の高いコバルト60(74ギガベクレル)やイリジウム192(370ギガベクレル)の放射性物質が小線源として使用されています。照射は数分から十数分で短時間に終了するため、患者の照射による苦痛は軽減されます。

照射装置内には1個の高線量率用小線源が装備されています。装置の線源格納容器からから飛び出た線源は、あらかじめ体内に挿入されたチューブの中を通り、チューブ内で停止かつ移動を数秒ずつ繰り返しながら広い範囲にわたり照射していきます。複数本のチューブを使用する場合は、小線源は1つ目のチューブに挿入した後、照射が終われば次のチューブに移って照射するというように順番に挿入されていきます。チューブ内の小線源の停止位置や照射時間、必要な照射線量や線量分布は治療計画用コンピュータを使用して計算されます。(図2.3)。

アプリケータ
患者の治療の際には、それぞれの治療部位に対応したアプリケータと呼ぶ専用の器具が用いられます(図2.4)。前述のチューブもこのように呼ばれます。例えば、子宮頸がん治療の場合には、子宮腔内に1本のタンデム用アプリケータ、膣部に2本のオボイド用アプリケータが使用され、子宮頸部を囲むようにして最適な線量分布で放射線が照射されます(図2.5)。

照射法
高線量率密封小線源治療では、悪性腫瘍を治癒させ、正常組織の損傷を低減するために、照射回数は数回に分割して行われます。

第3章 低線量率小線源治療

低線量率用小線源

この治療法は、主に、前立腺や舌に発生した悪性腫瘍に密封された低線量率用小線源を直接刺して治療します。小線源は直接、針や鉗子(ピンセットのようなもの)などを使用して挿入されるため、医療従事者の被ばくは避けて通れません。医療従事者の被ばく線量をできるだけ低減するために、比較的線源強度の少ない小線源が使用されています。そのため、患者への照射時間は数十時間以上と長くかかります。

前立腺がんや舌がんでは、直径約1mm、長さ約5mm程度の小線源が用いられ、線源は抜き取らずに永久的に刺したままの状態です。この方法は、永久刺入法といわれています。例えば、前立腺がんの治療では、ヨウ素125(13.1メガベクレル)の放射性物質を100個程度(図3.1)、舌がんの治療は金198(185メガベクレル)の放射性物質を10個程度(図3.2)永久刺入し、病巣に必要な線量をゆっくりと持続的に照射していきます。密封された小線源は臓器に刺入されたままですが、線源の放射能は、時間の経過とともに徐々に減っていきます。したがって、数日から数週間で患者から放出する放射線被ばくの問題はなくなります。

第4章 非密封小源治療

内部放射線治療には、密封された放射性物質と密封されていない放射性物質を用いる方法があることは前述のとおりです。次は、密封されていない放射性物質を用いた治療法について話をしていきます。

 この治療法は、主に、甲状腺がんや多発骨転移、褐色細胞腫などに対して行われます。放射性物質は溶けやすいカプセルに封入されているか、または注射薬の形になっており、飲用または静注して用いられます。体の中に取り込まれた放射性物質は全身に行きわたりますが、放射性物質の種類により集まりやすい臓器が決まっています。治療では、この放射性物質の特異性を利用し、目的の臓器を治療します。

甲状腺はヨウ素を取り込んで甲状腺ホルモンを作る臓器であるため、甲状腺がんではヨウ素131(1.11~7.4ギガベクレル)のカプセルを患者に飲用させ、治療を行います。注意が必要なことは、甲状腺がんにヨウ素131を集まりやすくするため、治療前にはヨウ素を含むこんぶなどの食品の摂取を制限しなければならないことです。治療前や治療中には甲状腺にはヨウ素131が集積しますが、時として治療後には甲状腺には集まらなくなることがあります(図4.1)。また、甲状腺がんが肺や骨などに転移した場合でも、ヨウ素131で治療ができます。その理由は、甲状腺がんの性質を持ったがん転移ですので、ヨウ素131は転移の部位に集まりやすいからです。また、飲用したヨウ素131は主に尿に排泄されていきます。それ以外にも体の中に残っているヨウ素131は時間の経過とともに徐々に減っていき、数日から数週間で患者からの放射線被ばくの問題はなくなります。

さらに、甲状腺がん以外の前立腺がんや乳がんなどの多発骨転移では、骨の主成分であるカルシウムと化学的性質が似ているストロンチウム89(1.5~2.2メガベクレル毎キログラム)を静注した治療が行われます。骨転移により造骨が進んでいる場合には、正常な場合よりも3倍程度多くストロンチウムが骨に集積されます。この治療法は骨転移の痛みの緩和に効果があり、有効な治療法の一つです。ストロンチウム89はベータ線といわれる弱い放射線のみを照射する放射性物質であるため、放射線は体の外にはほとんどから出てきません。一般人に対して放射線の防護管理が必要ないために、外来で治療ができます。

最終更新日:2013年8月26日