シリーズコラム『介護職の仕事と待遇について』
- 第3回「介護の仕事は離職率が高い?」
シリーズ第3回は、「介護の仕事は離職率が高いのか」についてお話をしたいと思います。
おそらく、このことは「介護職はきつい」「介護職は低賃金」、だから「普通に考えて、こんな悪条件が重なる仕事なんてやってられないだろうから、きっと離職率が高くなるはずだ」という論法で考えた結果だと思います。
ところが、シリーズ第1回、第2回で書かせていただきましたので、先の2回を読まれたみなさんが、きっと持っておられた「きつい」、「低賃金」というイメージは、かなり変わってこられたのではないかと思います。
前2回のお話で外堀から攻めて、内堀を埋め尽くすところまで来ましたので、いよいよ一番の難敵である「離職率が高いはずだ」という本丸へと登りつめることにいたします。
では、実際に行われている調査結果の数字を取り上げながら、「本当のところ離職率は高いのか、低いのか」について見ていきます。
厚生労働省が平成24年度に実施した、「雇用動向調査」の報道発表資料を見ると、すべての業種の平均離職率は14.8%となっています。では、介護職に限定して離職率はどうかといいますと、公益財団法人介護労働安定センターが平成24年度に実施した「介護労働実態調査」の結果では、正規職員の離職率は15.7%となっています。この数値だけを見ると、確かに“高い”と思われても仕方がないかもしれませんね。
そこで、厚労省の「平成24年度雇用動態調査結果の概況:結果の概要」にある「産業別の入職と離職」に基づいて、離職率を業種別に見てみることにします。そこには、例えば宿泊・飲食サービス業では27.0%、生活関連サービス業・娯楽業21.3%、教育・学習支援業14.5%、卸売・小売業14.4%と続き、医療・福祉が13.9%という数字が上がっています。
対人(援助)サービスを仕事にする業種や職種は、常に利用者・顧客にとって最善・最上のサービスを提供することに気を配りますので、非常にストレスがかかり続けます。精神的にも“疲れる”業種・職種であることは間違いありません。そのような、対人(援助)サービス業の職場・職種と比べると、介護職の15.7%という離職率は、決して高い数字であるとは言えないのではないでしょうか?
これまで、介護職に対してのいくつかの誤解を解きたく、3回シリーズで原稿を書いてきました。
介護の仕事(のみならず、福祉の仕事)は、“ひと”に夢を与えるとともに、利用者の方との関わりを通じて、夢を与えていただける仕事だと思っています。実際、この原稿を書いている私自身は、これまでの臨床において、関わらせていただいた患者・ご家族に育てていただいたと思っていますし、その経験があったからこそ、私は今、この広島国際大学の教壇に立つことが出来ていると思っています。
残念ながら、このシリーズをすべてお読みいただいたとしても、誤解を解いていただけるほどに、十分なお話にはならなかったかもしれませんが、もし、少しは介護職に対する誤解を解いていただくことができたのなら幸いですし、さらにまた、介護そのものに目を向けていただくきっかけになったようでしたら、本当に嬉しいです。
次回からは、介護職から離れ、“相談援助職”(福祉職)について具体的に理解していただき、一層、福祉職に対してより良いイメージ持ってもらえるような内容のお話をさせていただければと思います。乞うご期待。
医療福祉学部長 吉川眞
最終更新日:2014年9月29日