チーム医療に強い人材を育成する医療系総合大学

学部

第1回2012.8.6更新

ハートフェルトプロジェクト・チームK
被災地の子ども支援:影絵を用いた心のケア

2011年3月11日に起こった東日本大震災で、たくさんの方が亡くなられ、たくさんの物が失われてしまいました。加えて、被災地の方たちの心の中からも、たくさんのものを奪い取ってしまいました。震災直後は日本全国からボランティアが出向き、いたるところで活動が展開されましたので、震災から1年数か月が過ぎた今では、一見、復興は進んできたように見えます。しかし、ほとんどのがれきは色々な所にうず高く積み上げられたままですし、そのがれきの山と同様に、被災された方たちの心のなかに残っている“痛み”はすぐに拭い去ることができるわけでもなく、蘇ってくる記憶と戦いながら日々の生活を送っているというのが現状ではないかと思います。受けた痛みの影響は特に子どもたちにこれから出てくると思います。
被災地はもちろん、これからのこの国を支えていくのは子どもたちですが、その子どもたちをより健全に成長させていくのは、子どもたちと子どもたちを取り巻く人たちとの結びつきです。しかし、その結びつきが、震災によってかなり弱められてしまいました。放射能のことばかりに目が向いていますが、結びつきの希薄化による子どもたちのこころへの影響も、非常に懸念されるべきことではないかと思います。
そこで、吉川ゼミOB/OGと現役学生とで構成する「ハートフェルトプロジェクト・チームK」で、被災地の子どもたちと保護者、さらには地域の方たちとのつながりを再構築することを目的とした活動を展開することになりました。しかし、心のケアを行うには、先ずは子どもたちや保護者とチームKのメンバーとの間での関係構築が図られる必要がありますが、それにはかなり時間を要します。その間、関係の構築を意図しながら、つなぎの意味で子どもたちの心に安らぎをもたらすツールはないかと模索した結果、ステンドグラスタイプの“影絵”を用いてはどうかということになり、活動を開始することにしました。
第1回の活動を6月30日に、福島県いわき市の船尾保育園を舞台に、影絵の上映と影絵の自作を通じて、子どもたちと保護者の方との交流を深める活動を行ってきました。当日は3,4,5歳児が40数名、保護者が30数名参加してくださいましたが、影絵を作ることが初めての方がほとんどなので、子どもたちと保護者の方が一体になって取り組んでくださいました。「家でも子どもたちと作ってみます」というご意見が多く聞かれたので、親子の結びつきを深めるきっかけになったと思っています。
今後は、8月11日には宮城県女川町教育委員会が小学生全学年の子どもを対象とした「まなびっこ夏休み特別講座」をチームKの影絵の上映・上演と影絵の自作のために開催してくださいます。また、25日にはいわき市の白水のぞみ保育園が地域住民との交流を目的として開催する「子ども会」、さらに、11月は女川町教育委員会、12月には女川町を拠点に活動しているNPOが開催する未就学児童とお母さんのためのクリスマス会への協力要請もきています。 また、津波による被災規模が大きかった女川町教育委員会には「最低5年は女川町に継続して来させていただく」と伝えていますが、そのこともあってか、「仮設のコミュニティ形成が進んでいないこともあって中・高齢者の孤立化が問題になっている。年3回の子ども向けの講座とは別に、中高齢者向けのプログラムの企画・実施についての協力してほしい」との要請もいただいています。
福祉専門職として身に着けてきたことを活かすことが出来る時機の到来だと思いますので、OB/OG・現役学生ともども、出来る限り要請にはこたえていきたいと思っています。

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吉川 眞 教授

医療福祉学部 医療福祉学科長

専門は、「臨床ソーシャルワーク」、「ターミナルケア」、「対人援助論」。

影絵について説明する吉川教授

保護者と子供たちの影絵製作風景

「まなびっこ夏休み特別講座」フライヤー

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