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「学園広報誌FLOW99号」で健康科学部 心理学科の松木太郎講師を紹介しています。

2022年8月5日

JOSHO FRONTIER研究最前線【学園広報誌FLOW99号(2022.8.5発行)掲載記事】

少年犯罪に質的な変化

ネット利用の低年齢化も影響か

思春期の脳発達へ理解が必要

健康科学部 心理学科 松木 太郎 講師

 

 

犯罪白書によると、2020年の少年刑法犯(14~19歳)の検挙は2万2552人で前年より約3500人少なく、04年以降は減少が続いています。一方、21年末の警視庁の統計では、オレオレ詐欺など特殊詐欺による少年の検挙・補導は前年から微増しました。「少年犯罪がこれまでメインだった窃盗や暴力行為などから、質的に変化していることが考えられます」と子どもや青年の発達精神病理学を専門とする松木講師は指摘します。

更に質的な変化が起きている理由を「インターネット、SNS利用の低年齢化により、若者の衝動性や攻撃性が発露する場がネット上にシフトしている可能性が考えられます」と分析しています。さまざまな人との交流の幅を広げるツールと認めながらも「ネットは深海のような世界。どんなところにアクセスし、やりとりしているかは本人以外に分かりませ

ん」。6月にはネット上の誹謗中傷を念頭に刑法の侮辱罪が厳罰化され、これまで表に出なかった事案がカウントされるようになれば、量的にも増える可能性があります。

こうした傾向を抑えるためには、子どもだけでなく大人にもインターネットに関する知識や功罪の教育が不可欠ですが、松木講師は、加えて思春期特有の脳の発達過程への理解も必要と言います。

「脳科学の観点では、思春期になると感情・行動の表出をコントロールする機能より先に、促進する機能が発達します。いわばアクセルがブレーキより先に発達するため、感情・行動がコントロールできずに攻撃行動や衝動的行動として表れる、と考えられています。一方で、脳を『再構築』しているこの時期では、周囲からの温かいサポートによって感情や行動をコントロールする機能も着実に育っていくことが数々の研究から明らかにされています。そのため周囲の大人が彼らの発達を理解し支えていくことが大切といえます」。

松木講師は大学院生の時、適応指導教室で約5年間、不登校の児童生徒らを支援した経験があり、「問題行動はなぜ思春期に増えるのか。彼らの可能性を伸ばすために、何ができるのか」との問題意識を持ちました。それが今の研究につながっています。学生への希望として「人は絶えず変化する『環境』とのダイナミックな相互作用を通して発達していきます。人の発達を広く、深く理解していくために、さまざまな学問に触れ、多角的な観点を身につけてほしいです」と話します。

 

■プロフィール:松木 太郎(まつき・たろう)講師

2011年京都府立大学福祉社会学部福祉社会学科卒。
2013年神戸大学大学院人間発達環境学研究科心身発達専攻博士課程前期課程修了。
2017年同人間発達専攻博士課程後期課程修了。
芦屋市教育委員会適応教室指導員、名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学特任助教などを経て、2022年から現職。
公認心理師。博士(学術)。大阪府出身。

 

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