大学院中間発表会

2016年04月25日
4月23日に、本学の医療・福祉科学研究科医療工学専攻の中間発表会が開催されました。午前9時に始まり、午後3時30分頃まで、博士前期課程2年生21名、博士後期課程2-3年生5名の大学院生が研究の途中経過を発表しました。
医療工学専攻の院生は、必ずしも本学の学部の卒業生ではありませんが、基礎となる学部が保健医療学部と総合リハビリテーション学部であることから、診療放射線技師、臨床工学技士、臨床検査技師、救急救命士、理学療法士、作業療法士と様々な医療系国家資格を持っています。過去には、看護師や、医療系資格を持たない方も入学してこられたこともあります。
従って、発表内容も、施設へのアンケート調査、バイオテクノロジーを利用した研究、医療器具や治療方法の開発とその効果検証、医療機器の評価に関する研究、医用画像に関する研究、患者さんの治療中に得られたデータを基にした研究など多岐に渡ります。最近の人工知能研究の流れのなか、機械学習を応用している研究発表もありました。
まだ前期課程2年生なのに、十分に後期課程の博士論文になる、という高い水準の研究発表もあれば、まだまだこれからという発表もありましたが、南山医療・福祉科学研究科長(本学の研究支援センター長兼任)も挨拶のなかでコメントしておられたように、年々研究水準が上がってきていると思います。
院生の発表が終わる毎に、教員や他院生から質問や、助言があります。研究は、指導教員や補助指導教員の指導の下に行われますが、異なった視点からの指摘によって、研究がよりよいものとなっていきます。今回発表した院生のうち、前期課程の院生、および後期課程3年生は、来年2月に、同様に研究結果を口頭発表します。その発表を基に、口頭試問があり、これに合格しないと修了できません。
私が指導教員となっている2名の院生は、3月以降仕事が忙しくなり、直接話しながら準備をすることができませんでした。忙しい中、彼らが作成したPowerPointのスライドについては、直前まで修正してもらいましたが、彼らが言いたいことが十分には反映されていない状態での発表となりました。経験の少ない彼らに、もう少し早く準備をするように指導するべきだったと反省しているところです。
発表会には、かなりの人数の学部生も参加しており、発表会終了後に、「大学院に行って良かったことは」という質問がありました。院生からは、「一度就職したが自分達が行っている治療効果の科学的根拠がわからなかった。それが得られるのではと思う。」「いろいろな会で発表でき、他の研究者と話ができるのが楽しい。」「研究を進めると、その事に関しては自分が一番と思えるようになった。」というような回答がありました。なかなか、頼もしく思いました。
ところで、最近の発表では、PowerPointあるいは類似のツールを用いており、発表の直前まで修正ができます。私が大学を卒業し、研究を始めた頃は、スライドを作るのは大変な作業でした。スライド原稿中の文字やグラフも、手で描いていました。私は、細胞からの電気信号を記録していましたが、大きめのスマホくらいの画面に一瞬電気信号の波形が写るのですが、それを高感度フィルムで撮影・現像した後、写真を貼り付けるということをしていました。切り貼りもしながらスライド原稿ができたら、それを均一な照明の下で撮影し、フィルムを自分達で現像、あるいはカメラ屋さんで現像してもらって、やっとスライドの完成となっていました。従って、遅くとも原稿は発表の前日にはできていないといけません。カメラ屋さんに電話して、ギリギリまで待ってもらった、ということもありました。
そのような時代には、何を言いたいか、あと全体の構成をしっかり考えてからスライド原稿を作成しないといけません。反面、徹夜に近い作業をしていても、スライド原稿さえできあがれば、しなければいけないことがなくなり、しっかり「寝る」ことができました。今は、簡単に、また、直前まで修正できるので、全体の構成や言いたいことも曖昧なままスライドを作成し、完成した気になっていたらいろいろと指摘されて慌てたり、直前までの修正でほとんで寝てないままに発表したり、ということもあります。スライド作成方法や発表方法は変わってきましたが、どのような背景を持った人たちに発表をするのかを意識しつつ、 何を言いたいか、何を見せたいか、ということを明確にしておかないと、伝わらない発表になるところは同じです。
今回発表をした皆さんは、いろいろな形で指導者となる人ばかりです。研究の中身が重要なのは当然ですが、学会などでたくさんの経験をして、いい発表はどのようなものか、伝わる発表というのはどのようなものか、ということもしっかり考えて欲しいと思います。