臨床検査技師の存在は今後ますます大きくなる!
私は40年間臨床検査技師として医療機関に勤務してきました。これまでの臨床検査技師の業務を振り返ってみると、当初は検査室の中で黙々と仕事をこなす毎日でしたが、検査技術の進歩、臨床検査業務の拡大、チーム医療への参画などにより業務内容は劇的に変化しました。現在では、臨床検査技師は外来、病棟にも積極的に出向いて幅広い業務を行うことで、病院でなくてはならない職種の一つとして位置づけられるようになりました。
一般的に医療機関の検査室は、生理検査、血液検査、微生物検査など多くの部門から構成されますが、その中でも私は病理検査を主に担当していました。ここでは、患者さんの体から摘出した臓器や採取した細胞(以下、検体)を詳細に調べて癌などの診断を行うため、臨床検査技師は正しい診断につながるように正確かつ丁寧に検体と向き合うことになります。最近では、癌の治療において、腫瘍細胞に特殊なたんぱくや遺伝子異常を認めると、それらを狙い撃ちする分子標的治療が行われるようになりました。この治療は、検体に存在する遺伝子異常などの情報を正確に検査することが必要不可欠ですが、適切な処理をしないと診断結果に大きな影響を及ぼすことが明らかになりました。そのため、検体を扱う病理検査では厳密な管理が求められるようになり、正しい診断を行う上で臨床検査技師の専門的な知識と卓越した技術がこれまで以上に重要になってきました。EBM(根拠に基づく医療)によって診断・治療が行われる中、臨床検査技師の存在は今後ますます大きくなるものと思われます。
臨床検査学専攻で行う講義や実習では、長年携わってきた臨床検査技師としての経験を活かして、臨床検査技師となるために必要な知識の習得ができるように心がけるとともに、臨床検査技師であるからこそ感じることができる充実感や感動などについても伝えていきたいと考えています。研究室では、各種細胞を用いて、形態学的所見や細胞質・核に発現するたんぱくを検索するなど、基礎的な研究を行います。
病気で苦しむ患者さんたちを救う上で重要な職種の一つである臨床検査技師を目指す方々を心よりお待ちしています。