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診療放射線学科2025.11.21

診療放射線学科 松尾准教授らの国際共著論文が英国王立化学協会(RSC)発行のPhysical Chemistry Chemical Physics誌に掲載されました。

 

・論文の概要

アルツハイマー病やパーキンソン病などのアミロイドーシスと呼ばれる疾患では,疾患原因となるタンパク質が繊維状に凝集したアミロイド線維が臓器内に沈着します.アミロイド線維が臓器内の細胞膜に結合し, それを損傷させることが発症原因の1つと考えられています.しかし,膜損傷時に,膜を構成するリン脂質分子にどのような変化が起きているか不明でした.今回の研究では,リゾチームというタンパク質のアミロイド線維を対象に,中性子準弾性散乱という手法を用いてこの問いに取り組みました.大きな膜損傷を引き起こす線維(H線維)と損傷が小さい線維(L線維)を比較することで,大きな膜損傷に特有の物理変化を捉えることを目指しました.さらに,データ解析には,以前にフランスとの共同研究で開発したリン脂質分子の運動(正確には分子を構成する原子の運動)を世界最高精度で解析できる理論モデルを用いました.その結果,約20ピコ秒(1ピコ秒は1秒の1兆分の1)で起こるリン脂質分子の”遅い”運動が, L線維によって変化する一方,約2ピコ秒で起こる”速い”運動はH線維によってのみ変化することが分かりました.アミロイドーシス発症の初期過程である膜損傷では, 数ピコ秒という局所的で速い原子運動が重要な役割をしていることが示唆されます.

 

【論文情報】

・論文タイトル

Dynamical changes of phospholipid membranes caused by polymorphic amyloid fibrils studied by quasi-elastic neutron scattering

 

・雑誌名, 発行年, DOI

Phys. Chem. Chem. Phys., 2025, 10.1039/D5CP02985F

 

・著者

Tatsuhito Matsuo, Seigi Yamamoto, Taiki Tominaga, Judith Peters (†責任著者)

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