― プロテアーゼASPが毒素を活性化し、上皮接合部の破綻を促進 ―

広島国際大学 薬学部の小林秀丈らの研究グループは、横浜薬科大学および岡山大学インド感染症共同研究センターとの共同研究により、細菌 Aeromonas veronii biotype sobria(以下、A. veronii sobria)が腸管上皮のバリアを破る仕組みの一端を明らかにしました。

本研究では、同菌が分泌するセリンプロテアーゼASPが、前駆体型の毒素「プロアエロリジン」を活性化するとともに、上皮細胞どうしの結合を支えるタンパク質を切断することを確認しました。活性化したアエロリジンとASPが協働することで、細菌の上皮細胞層の通過が大きく促進されます。特に、アエロリジンが先に細胞へ作用した後にASPが作用すると、上皮接合部タンパク質の分解が強く促進されました。

本成果は、A. veronii sobria が局所の粘膜感染から侵襲性感染へ進む仕組みの理解や、二つの病原因子の協働を標的とする新たな抗病原性戦略の検討につながることが期待されます。

本研究成果は、米国微生物学会の学術誌「Journal of Bacteriology」に、2026年7月10日にオンライン公開されました。

― 発表のポイント ―

・ASPが前駆体型アエロリジンを切断し、活性をもつ成熟型毒素へ変換することを示しました(図A)。
・ASPが上皮接合部に関わるZOタンパク質群やEpCAMなどを切断することを確認しました(図B上部)。
・アエロリジンとASPの協働により、細菌の上皮細胞層の通過が大きく促進されました(図B下部)。

― 研究の概要 ―

アエロモナス属細菌は水環境に広く存在し、ヒトでは胃腸炎や創傷感染などを引き起こします。重症化すると、菌が粘膜を越えて体内へ侵入し、菌血症や敗血症に至ることがあります。A. veronii sobria が分泌するASPとアエロリジンは、それぞれ感染に関わることが知られていましたが、両者がどのように連携して上皮バリアを破るのかは明らかではありませんでした。

研究グループは、ヒト腸管上皮由来の細胞を用いて上皮バリア機能を調べるとともに、5,472株の変異株を解析しました。その結果、ASPとアエロリジンの双方が上皮バリアの破綻に関わることが分かりました。また、ASPが上皮接合部タンパク質を直接切断するほか、前駆体型アエロリジンを切断し、活性をもつ成熟型毒素へ変換することを確認しました。

さらに、ASPとプロアエロリジンを併用すると、どちらか一方だけの場合に比べて細菌の上皮細胞層の通過量が大きく増加しました。特に、アエロリジンが先に作用する条件では、ASPによるZOタンパク質群、クローディン-7、EpCAMの分解が強くみられました。アエロリジンが細胞膜や細胞骨格を不安定にし、ASPが接合部タンパク質へ作用しやすくなることで、細菌が通過できるすき間が形成されると考えられます。

― 研究の意義と今後の展開 ―

本研究により、ASPが「アエロリジンの活性化」と「上皮接合部タンパク質の切断」という二つの役割を担い、アエロリジンと協働して上皮バリアを破綻させることが示されました。今後は、腸管オルガノイドや動物感染モデルでの検証を進めるとともに、両因子の協働を抑える方法を探索します。

なお、本研究の主な結果は培養細胞を用いた実験によるものであり、感染症の重症度や治療効果を直接示すものではありません。

― 論文情報 ―

論文名:Aeromonas veronii biotype sobria serine protease activates aerolysin and cleaves EpCAM to breach the epithelial barrier
著者:Hidetomo Kobayashi、Soshi Seike、Eizo Takahashi、Keinosuke Okamoto、Hiroyasu Yamanaka
掲載誌:Journal of Bacteriology
公開日:2026年7月10日
DOI:[10.1128/jb.00141-26](https://doi.org/10.1128/jb.00141-26)

― 研究費等 ―

本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(JP16K18926、JP20K07504)および広島国際大学 特別研究助成(TK2506865)の支援を受けて実施しました。