レポート 今、現場を知る。

薬剤師の積極的な活用で、
日本の医療の質が向上します。

客員教授(2016年7月〜2023年3月)木平 健治

客員教授(2016年7月〜2023年3月)木平 健治

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  • 今、現場を知る Vol.01 客員教授(2016年7月〜2023年3月)木平 健治

地域医療でも、チーム医療の現場でも
薬剤師の存在は欠かせません。

高齢化が進み、薬物療法はますます高度化。在宅医療を含む地域医療が推進される中、薬剤師が他職種との連携のもとで主体的に専門機能を発揮することへの社会的な期待が増しています。平成22年の厚生労働省医政局長通知では、「薬剤師が薬物療法に主体的に参加することが非常に有益である」と明言し、業務例を挙げて、薬剤師のチーム医療への積極的な参加を求めています。

チーム医療の中で、薬の専門家(薬剤師)が薬について医師や看護師を積極的にサポートすることで、ミスや無駄が減り、患者さんに適切な薬物療法を提供することができます(医薬品の適正使用)。その結果として、医療の質を上げることにもなるのです。今や病棟の運営も、チーム医療も、薬剤師抜きでは考えられない状況になっています。

客員教授(2016年7月〜2023年3月)木平 健治

実際に病棟では、医師が処方を作るときに、薬剤師が薬物療法のプロトコル(標準治療)について提案し、処方の設計・作成、進行管理に医師と協働で関わります。薬剤師はさらに薬効や副作用のモニタリングと評価を行い(薬学的管理)、その処方が最適かどうかを薬学的な視点で評価して医師に提言しています。 薬物療法の入口のところで医師と薬剤師が治療の目標をきちんと確認した上で、薬剤師は薬の種類や投与方法などに関わっていくことができるのです。一部の施設ではプロトコルに基づき薬剤師が薬学的判断を行うために聴診器を手にし、バイタルチェックを行うことも認められています。このように薬剤師が積極的に関わることで、医師の負担も軽くなり、薬物療法の質も上がり、結果的に医療費の削減にもつながります。 平成24年には診療報酬改定で「病棟薬剤業務実施加算」も設けられました。薬剤師の業務は、以前よりも圧倒的に拡大しています。

社会と時代を見据えた、実力ある薬の専門家と
薬学の未来を拓く研究者の育成をめざして。

薬剤師は、町で人々の一番近いところにいる医療人です。かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師という言葉がありますが、医師やクリニックよりもアクセスしやすく、地域住民のセルフメディケーション(自分で健康を管理すること)全般に関わることができるのは、薬局だけです。 そんな薬剤師に求められるのは、人間としての資質はもちろんですが、「薬の専門家」として薬を使うことにしっかりと責任を持つことです。 薬理作用の知識だけでなく、臨床現場を理解した上で、どういう目標で治療をし、どういう薬をどういうタイミングで使うのかという薬物療法の視点。さらに、病気や薬の全体像を見て、「薬」というフィルターを通して患者さんに何が起こっているのかを判断・評価できる力が求められています。 また、チーム医療の中で薬剤師としての役割を果たすためには、自分の考えをしっかりと相手に伝えられる力も大事です。 そうした力を育み、「薬を使うという視点で全ての責任が取れる薬剤師を育てる」ことを、これからの薬学部教育はめざすべきでしょう。さらに、「創薬(新薬の開発)」「医療教育を支える人材の育成」も大学の使命ですから、創薬研究者や、大学院に進学し将来の薬学・医療教育を担う人材の育成もおろそかにはできません。 本学が力を入れている専門職連携教育(IPE)の中で、他職種がお互いにその役割を理解すれば、チーム医療の質は確実に上がります。常に社会や医療がどのように動いているかを察知し、それに対応していける薬剤師を世の中へ送り出し、地域医療に貢献したいと願っています。

客員教授(2016年7月〜2023年3月)木平 健治

木平 健治(きひら けんじ)

広島国際大学 薬学部薬学科 客員教授(2016年7月〜2023年3月)
日本病院薬剤師会 会長
(前 広島国際大学 薬学部薬学科 教授)
(元 広島大学医学部附属病院薬剤部 教授 薬剤部長)

薬学博士

専門分野:臨床薬学

研究テーマ:医薬品の適正使用

所属学会:日本薬学会、日本医療薬学会、日本病院薬剤師会 他

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