医療経営学科
日本の医療法人は現時点で持ち分ありがほとんど。プライベートカンパニーのイメージの理事長が多い。それに対して、地域医療連携推進法人は公共的な非営利性の法人ですから、なかなか意識を変えられないと言うことが現実問題としてあります。逆に「推進してよ」とボールを投げられた場合にどうして進めていくのか興味があります。地域の適正に合わせて介入してきます。住民参加の審議会にも、医師会代表として入ってきます
イメージで考えて3パターンあると思います。まず、人口減少地域。舞鶴、呉は公立病院の共倒れ抑制が大命題ですから、誰かが旗振ってやっていくとなります。結果的に機能分化できて、医療崩壊を救う可能性が出てきます。第2点目は、すでに崩壊が起きている地域。公私、医療・介護といったフェクターがあるわけですから、その機能を超えて、設立法人を超えて再編が必要になってくるので、推進されます。新潟県ではそういう事例がありました。
3点目は、高齢者が激増する、特に首都圏でこれができるかって言うと。使えないだろうなと思います。全体的に医療従事者は不足しますから。配置替えてもパイが不足していますから。解消に寄与しません。これからはいろいろな成功事例が出てきて、メディアの特集などを通じて。それを見て、うちもやってみようって事になります。だんだん進行していきます。
これは当然、地域包括ケアを実現するための施策ですから、実現の障壁になっている個々の医療法人の緩やかな統合をめざしています。
これは当然、寄与すると思います。
多分、大いに影響する、と思っています。マイナンバー制導入で、患者個人がデータを持つ。自分が行ったところで、データを提供すると言うことになり、そこは非常にうまく進んでいくと思います。従来、各病院ごとに記録を持っていて、とにかく1からかかって記録を集めました。それが、病院の視点ではなく、患者の視点でデータが集まってくる。病院から介護施設に移っても、前の病院の治療はそのまま参照することができるとか。
日本のデータの欠陥ですけど、ライフスパンのデータを持っていません。小さいとき、どんな病気にかかったか、アレルギー持っていたか、成人するにわたって変わっていったか、どんな後遺症があるかなどが記録されるようになったことは、疾病管理の面で非常に大きい役割になってくると思います。問い合わせても病院に5年前の物しかなかったのが、個人でデータを保有することによって役立てることができます。
尾道の事例が一番いい事例だと思いますが、医療介護連携がかなり進んでいるといいますが、障壁が残っているのは事実なんですね。そこをどう融通を利かせていくかと言うときに、ビッグデータ、マイナンバーの導入が寄与するだろうなと思います。患者さんが退院するときに、医療と介護を担当する関係者が全員、一堂に集まって、カンファレンスをする訳です。
たとえば、病院の医師から退院後にはこんな事に注意してくれと言う申し送りがあったりとか。或いは介護サービス事業者側からですね。患者さんがのど詰まらせた場合、どうしたらいいのかとか、そういう意見の交換が行われます。ところが、なかなか、これが行われていないというのも事実です。介護側は医療のことが理解できていません。医療側は介護の事を理解できていません。ここに障壁というかバリアがあるんですね。相互理解ができていません。両方を見える人間が少ない。
二つの視点でとらえますと、まず、公立病院の視点でとらえますと、公立病院は当然、税金で運営され、税金が投入されています。ところが税金払う人たちが段々少なくなってきます。当然、存続が机上に乗ってきます。その際、選択肢として地域で統合します。しかも、自治体立病院は地域の基幹病院であることが多い。旗振り役であるケース、管理者が市長であるケースがあるわけです。その意味では非常に評価しています。うまく行けばいいなと感じています。
一方、民間病院の立場に立つと、持ち回りの医療法人にとっては文化的に相容れない。この制度が始まって。特に持ち分がある医療法人がすぐに手を挙げるかというと、なかなかそうは行きません。制度を運用するに当たって、どれだけの経済的なインセンティブがつくか、付けるかというところにかかっています。
うちの大学は医療経営を教えています。卒業して医療機関の経営に携わる人材を育てている訳ですから。運用を始めて、いろんな成功例、失敗例が分かってくると、まず学生が卒論のテーマにしてくると思います。ここではこんな事をして成功した、失敗した、何でなんだろうなと卒論にするような。あるいは修士課程、博士課程の人間が学位取得論文にするような。そんな事にはなってくると思います。
最初出てくるのは公立病院の統合。懸念していることは自治体病院で介護事業に出ているところはほとんどありません。介護サービスを始めるときに、公私の区別というか,自分たちの領域に入ってくるなと民間が拒絶した訳です。自治体病院が介護サービスをやっている事例はそうは多くはありません。兵庫県の赤穂市民病院は老健施設をお持ちです。訪問看護もやっていらっしゃいます。ああいう事例は少ないのです
次の選択肢として医師会病院がなるという可能性はあるかもしれません。地域の基幹病院が医師会立の病院であって、現に介護サービスとか在宅サービスをやっている医師会員がいるというと、同じ旗の下に集まるケースは出てくるだろうなと。ところが別があって、競合しているとか、林立しているとかあれば、医師会が旗振るかなあ。その場合は自治体の首長が旗振ると言うことになります。
地域での在宅医療を担うという意味で診療所の働きは大きい。病院だけあって診療所がなかったら地域医療は成り立たない訳ですか、永続性は求められるわけですけども、一方で診療所は撤退するのは簡単なんです。息子がやらないと言うことは当然起こってきます。どうしても地域で続けたい、その場合に医師を派遣してもらうとか、そういうカタチで加入をしてくると言うことはあるのかも知れません。ただ、診療所レベルの母数が多いから、全部に派遣は難しくなってきます。だから、ある程度統合して、その上で維持させるとか。
病院の外来部門をテナント制にして、そこに開業医を入居させ、病院は収入から家賃を払ってもらうと言うことも起こってくるかも知れません。
病院の医師にとって外来診療が負担になっています。手術できない。入院患者をまともに診られない。そういう事態が起こっているので、外来部門をどうしようかと言うことになってきます。ただ単に廃止するのではなく、そこは地域の開業医の先生に担ってもらうという選択肢が出てくるかも知れません。
大学病院が地域医療連携推進法人に参入してくる一番のきっかけというのは、広島市の事例が一番いいと思いますが、広大が地域医療連携推進法人をつくるといえば、地域の病院は、これは従わざるを得ません。入らないと医師派遣してもらえません。大学病院が旗振り役になる可能性はあります。ただ、2次医療圏に限定されるから、広大だと広島市内だけ、岡山大だと岡山市内だけという形になって幾つも作ると言うことはできません。ある大学が非営利型ホールディングカンパニー法人を作るメディカルセンター構想という報道がされていましたが、地域医療連携推進法人の圏域を2次医療圏に限定した背景には、大学病院の占有化を防ぐという目的もあったと思います。
従来、医療従事者の教育、病院職員の教育はスペシャリティーの教育でした。学んだ人間が何年かたって、通用しなくなってジェネラリストに移ってくるという背景がありました。現実にそれではスキルを発揮できない、スキルがつかないという事例が起こっていて、それで本学部のようなところが所望されています。
本学部の人材育成の肝というのは、ジェネラリストを育成するということです。いろんな分野に長けた人間を育てるというのが一つの目標です。医療のことは知っているけど介護は知らない、介護は知っているけど医療は全く知らないと言う人材がいます。これはこれからの時代にあいません。医療・介護を学び、社会保障や法律・制度を学んだ人間、精通している人間は、いずれは経営を担う可能性が出てくる。そのような人材を育成するのが本学の趣旨、理念だと思います。
これは全くの私見ですが、本学で養成している診療情報管理士はDPC / PDPS(診断群分類別包括評価支払い制度)や電子カルテの普及などに伴って、病院での位置付けが従来のスペシャリティーライセンスからスキルドライセンスに変化したように思います。ことに文系の学生が医療を学ぶ機会は乏しいので、在学中に診療情報管理士の資格を取得することは、医療に関する一定のスキルを有している証左になります。医療を学び経営も学んだ本学の学生が研鑽を積み病院の経営を担う、そんな時代が来ることを嘱望しています。