2017年06月08日

「感染対策を多職種で考えるシンポジウム」を開催

5月27日、看護学部主催「感染対策を多職種で考えるシンポジウム」を呉キャンパスで開催しました。シンポジウムでは、その特殊性から特に注意が必要な精神科病院と高齢者施設に焦点を当て、感染対策を第一線で実施してきた薬剤師、介護福祉士、看護師らでチームで行う感染対策を議論しました。

事例発表や質疑応答で議論を深めた

2002年の診療報酬改訂で明記されるなど、各病院で感染対策チーム(ICT=Infection Control Team)の組織化が進み、ここ数年で感染対策の必要性が増しています。なかでも一般科に比べてスタッフが半数程度の精神科や感染対策の知識があるスタッフの少ない高齢者施設では、独自の手法が必要だと、糠信憲明准教授(看護学科)がイントロダクションで説明しました。閉鎖病棟や隔離室など、患者の特性上換気できない環境、利用者の年齢からくる免疫力の低下など、各施設特有の事情が感染拡大のリスクを高めています。

「病院・施設ぐるみでの対策が不可欠」と糠信准教授

広島西部にある草津病院で抗菌薬の適正使用を推進する薬剤師・別所千枝氏は、抗菌薬の過度で不適切な使用が、薬の効かないウイルス・薬剤耐性菌を生み出し、感染を拡大しやすい傾向にしていると指摘。そこで、各ウイルスに対応した抗菌薬をデータベース化し、院内の感染対策チームで共有することで、効果を上げていると報告しました。

「適切な抗菌薬の使用が感染対策には重要」と別所氏

同じく草津病院の感染対策チームで唯一の介護福祉士であった久保井京子氏は、患者や要介護者と近い距離で接し、日々の些細な体調の変化にも気付く介護福祉士こそ、感染現場の最前線に立っていると説明。介護福祉士だから分かる感染の予兆や対策をマニュアルにまとめ、院内の感染対策に役立てていることを紹介しました。

「感染対策に専門職間の差はない」と久保井氏

看護師でありながら医療情報技師の資格を持ち、長谷川病院(東京都三鷹市)で電子カルテを活用した感染対策を主導する桑門昌太郎氏は、精神科のスタッフが治療に専念できる環境を整えることが重要だと強調。そのために医療行政の情報を逃さず、周辺病院の動きも参考に、病院に合う最適な感染対策プランを設計。地域のネットワークを生かしながら、感染拡大を防ぐのに最適な環境づくりに取り組んでいることを述べました。

「常にアンテナを立てておくことが重要」と桑門氏

講演後の質疑応答は、参加者からの質問をテーマに講師が意見を交わすパネルディスカッション形式で実施。参加者の多くが、自ら感染対策に取り組む立場にある専門職とあって、
「各専門職間で意思疎通する方法は?」
「一般病院とはどのように連携しているのか?」
など、具体的な質問が相次ぎました。

各講師から感染対策における多角的なアプローチが紹介された

広報室