2019年10月10日

障害者にとってアートとは
~医療福祉学科の学生対象「あいサポートアート展」講演会を開催~

10月1日、医療福祉学科の2年生を対象に「あいサポートアート展」の講演会を開催しました。同展は、2012年から毎年広島で開催されている障害者が制作した芸術作品の展示会で障害者の豊かな生活や社会参加を支え、県民の障害に対する理解促進を目的としています。本講演会では同展開催に先立ち、福祉職を志す学生にアートと福祉のかかわり、障害者にとってのアートの大切さなどを啓発しました。

まず岡山県新見市在住の画家・川内令子氏から、「アートの意義、アートの効果」をテーマに講演がありました。アートの本場・パリのコンテストでの入選経験があり、現在は各地で個展を開くなどの活躍を続ける川内氏ですが、「年に100枚以上の絵を描く生活は、過酷だった」と振り返ります。多忙な制作活動のなか、追い打ちをかけるように父親の容体が悪化。病院を嫌がる父親の介護との両立に限界を感じた時、その状況を救ってくれたのはアートだったと言います。川内氏がある日個展に展示するバラの絵を父親に見せたところ、「こんな絵を描くんだね」と見る見る優しかったころの表情に戻り、嫌がっていた入院を受け入れ病状が回復していきました。この出来事から彼女はアートの効果を痛感。
「私自身、アートに救われた。アートには人の心を動かす力がある」
と、アートの意義や効果について力説しました。

「これからもアートを通じて人の心を癒したい」と川内氏

次に「障害者アート」をテーマに、先天性の病気や障害に多く見舞われながらも、浮世絵などの日本画や「和」の世界をモチーフにしたオリジナルキャラクターなど多彩な表現で知られる広島市在住のアーティスト・中原晶大氏が講演。子どものころから絵を描くのが大好きで、特に日本的なものに興味があったという中原氏。障害者による表現を対象にしたコンテスト「アート・ルネッサンス」で入選(2011年と2013年)したことにより、支援学校卒業後、作業所で働きながら、いろいろな場所に呼ばれて個展を開くようになりました。やがて一念発起し、アーティスト一本に転向、そこから世界が急激に広がったそうです。活動を通して知り合った人はミュージシャンなど多彩ですが、「みな自分を、いつも手助けが必要な障害者としてではなく、アーティストとして対等に扱ってくれた」と言います。
「アートで共有できるものは、障害者と健常者はもちろん、国境も超える。好きなことにこだわれるアートは、障害者の可能性を広げてくれる」
と、障害者の立場からアートの重要性を説きました。

「これからも人とのつながりを大切にしていく」と中原氏

将来、福祉職として障害者に触れる機会の多い学生にとって、アートという新たな視点から障害者とのかかわりを考える機会となりました。

「あいサポートアート展」は、10月29日~11月3日まで広島県立美術館(広島市)で、11月19日~24日までふくやま美術館(福山市)で開催されます。

広報室