2014年12月16日

公開講座咲楽塾
「ビューティフルマインドを読む~精神看護学と数学の立場から」
開催!

11月22日(土)、数学のひろがり29「ビューティフルマインドを読む」を開催しました。
講師は、看護学部の糠信憲明准教授、呉学生課の藤友邦治課長、
私、西来路の3人が担当しました。

最初の講演は、藤友課長による「あらすじ紹介」です。
映画で印象的なシーンをスクリーンショットで紹介します。
参加者に丁寧に語りかけて、弁士による紙芝居のようでした。

 
↑藤友課長の講演が始まりました。「藤友課長がいい味を出していた」と卒業生も絶賛です。

「糠信先生と西来路先生のコラボと聞いて、映画そのものを知らないのに、
直感的にコラボしたい!と思いました。
ご迷惑をおかけしていないか心配でしたが、話した後は安堵感で一杯でした。
ワクワク感もあり、思い出に残る経験ができました。」
と、藤友課長から講演を終えての感想をいただきました。

次の講演は、糠信先生による「精神看護学の視点から」です。
心とは何か、統合失調症はどういう病気なのかを説明し、
映画に描かれるナッシュの病状と治療法を解説します。
本人が事実ではないと分かっている空想を、
患者さんが体験している妄想と同じように表現するのは正しくないと、
空想と妄想の違いについて解説したり、
『病気になる』はbecomeではなくhaveという表現で、病気とはその人の一部である、
などと解説され、患者さんに寄り添った優しい視点に心洗われました。
みんながその人らしくいられるよう、病気の正しい理解が大切です。

 
↑糠信先生の講演が始まりました。心はどこにある?頭?心臓?血?解説に納得です。

「数学とのコラボ、学部を超えた公開講座という貴重な講演の機会をいただきました。
違う分野の話であっても、いや、異なる学問分野だからこそ、様々な示唆をもらえました。
IPE(専門職連携教育)を進めるためにも横のつながりが大切だと感じました。」
と、糠信先生は講演を終えて納得の様子で語っておられました。

三番目の講演は、私の「数学の立場から」です。
ナッシュの業績のうち、ナッシュ均衡と多様体の埋め込み理論を解説しました。
全員が自分の利益を追求することは全体の利益になるのか。
映画の台詞をモチーフに意思決定を数学で分析するゲーム理論を説明します。
そして、球面やメビウスの帯のような多様体と呼ばれる図形の話が、
宇宙の形や相対性理論、ナッシュと関係があることを紹介します。

 
↑私の講演です。前半は応用分野を具体的に、後半は純粋理論を抽象的にお話しました。

最後は、質疑応答と鼎談でした。コラボの経緯や、
ビューティフルマインドとの出会い等を語り合いました。

 
↑鼎談風景です。藤友課長のリードで打合せから本番まで終始和やかな雰囲気でした。

「新しい試みのおかげで、若い女性の方や、初めての方も申し込んでくださいました。
ヒロコクの雰囲気を知ってもらうよい機会になったと思います。」
と、講座の運営にあたった呉キャンパス学部事務室の青木さんにコメントしていただきました。

大きな拍手に包まれて、講座終了となりました。
質問に来てくださる方々が絶えず、終了後も活発な議論が繰り広げられました。

糠信先生からアイディアをもらったのが1年半前で、
この夏から藤友課長も交え 2 週間ごとに打合せをしてきました。
ゆっくり丁寧に内容を醸成していきました。
映画をモチーフにした、精神看護学と数学の講演で、
それぞれの分野の違い、よさが明らかになりました。
違いは自分の分野を見つめ直すことでもあります。

参加者のみなさまからは、
「学生時代に戻ったようで、とても楽しかった。」
「映画を題材に立場が違う人がアプローチするのは面白い。」
「3人の専門の先生方が分担して講義を構成されたのは大変画期的だった。」
「映画を見たいと思った」「(本の内容を)深いところまで知ることができました。」
「精神疾患について聞く機会がなかったので参考になった。」
「数学が人間関係の中から考えられていることを知り親近感がわいた。」
と感想をいただきました。

糠信先生、藤友課長のお人柄に支えられ、学生時代のように仲良く、
率直に議論しながら準備でき、当日も和やかな講座になりました。
私達の柔軟で元気なチームワークをお伝えできていればいいな、と思います。

 
↑写真左は講演会直後の表情。右はポスター用に撮影したお気に入りの一枚です。

工学部 教授 西来路文朗