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シリーズコラム『(医療)福祉は、例えるとブラックホールのようなもの?』

③ 相談援助職って、どんな仕事をするんですか?(その2)

 

 前回お話ししたように、病気になると、患者さんだけでなくご家族も、からだの痛み、こころの痛み、社会・経済的な痛み、霊的な痛み(世話を受けるような状態になった自分の存在価値に揺らぎが生じたり)といった4つの痛みを抱えます。これらの“痛み”は患者さん・ご家族のQOL(生命・生活の質)を損なうだけでなく、治療効果をも損なうと言われています。医療福祉職(以下、医療ソーシャルワーカー:MSWと略します)は、(所属している病院の考えやMSWの技量によって異なりますが)この4つの内3つの痛みの軽減に取り組むことで、患者さん・ご家族のQOLを高めると共に治療効果を損なう要因を少しでも取り除くようにします。

 また、チームの一員としてMSWが大切にしている役割は、患者さんご自身のことや患者さんを取り巻く“環境(主に家族)”などについて、担当医師・看護師に十分に知ってもらうための情報を提供することと言えます。この点について、後遺障がいを抱えることになった方の例をもとに、お話をさせていただこうと思います。

 

 言うまでもありませんが、病院と家とでは“物理的”にも“人的”にも環境条件が全く異なっています。例えば、病院には様々な方が入院してこられますが、どのような方であっても移動しやすいよう、バリアフリーになっています。

 しかし、アニメに出てくるサザエさんのお家のような日本家屋の場合、家の中に入るには、引き戸式玄関にある敷居をまたいで入る必要があります。更に、家の中にはふすまの敷居、靴脱ぎ場から廊下に上がる“上がり框(かまち)”、トイレやお風呂場、浴槽などにも様々な段差がみられます。バリアフリーを謳っているマンションですら、確かに家の中はバリアフリーかもしれませんが、玄関と共用廊下との間に段差があったりします。一歩外に足を踏み出すと、勤めておられる方も買い物に行かれる主婦の方も、目的地に着くまでの間にはどれほどの“障害”があるでしょうか?でこぼこの道路やおしゃれなレンガ敷の道路、坂、階段はもちろんですが、通勤・通学の際に乗車するバスもそうですね。「最近、ノンステップ・バスってあるんじゃないの?」って思われているかもしれませんが、たとえバスには乗りこめるとしても、満員のバスの中に車いすで乗り込む… なかなか勇気のいることではないでしょうか?

 このように見てくると、障がいを抱えておられる方々は、健康な人では気がつかないような物理的、精神的なさまざまなバリアと格闘しながら、日々の生活を送られていることが分かります。

 

 医療職としては、退院された後で患者さんとそのご家族がどのような生活を送られるのかということを踏まえて、多くの専門職が連携・協働しながら治療計画を立てていく必要があります。そして、患者さんがせめて、社会復帰・在宅復帰して日常生活・社会生活を送ることができるようなレベルまで、改善するように治療を進める必要があります。

 もっとも、理想を言えばそうなのですが、医師・看護師を始め多くの医療職は非常に忙しく、患者さんの気持ちや患者さんが送られる日常生活や社会生活のこと、もちろんその患者さんにとって、一番身近な家族との関係などに関して細かく知ることはなかなか難しいのが現状です。

 そこでMSWは、患者さんとその家族と面接を繰り返すことを通して、患者さん・ご家族の関係や生活について、また戻っていかれる社会での生活、日常の生活の状況について具体的な情報を得ます。それらの情報の中から、治療上必要な情報のみを医療職に伝え、それを治療計画・看護計画等の様々な計画の中に反映していっていただけるように働きかけます。

 

 もちろん、治療の甲斐があり病気になる前の健康な体の状態に戻れたなら、これまでに述べたような生活をする上でのさまざまな“障害”は気にとめることなどはないかもしれません。しかし、残念ながら今の医学をもってしても治しきれない病気はまだまだたくさんありますし、リハビリを行い続けたとしても何らかの障がいが残ることも往々にしてあります。

 ただ、患者さんを取り巻くすべての人たちが患者さんのことを大切に想い、様々な職種がチームとなって取り組んでいるということが患者さんに伝われば、患者さんにとって生きることへの“ハリ”を感じることができることにつながる、つまり、QOLを高めることにつながると思います。ひいては再発の防止にもつながるのではないでしょうか。

 このように、MSWは医療チームの一員として、裏方的な存在ではありますが重要な役割を果たしています。

 

 このことは、精神保健福祉士が支援をする場合も同様で、精神障がい者の方が就労あるいは職場復帰できるように支援する際には精神保健福祉士が同じような視点で関わります。

 次回は、その精神保健福祉士の働きの一端についてお話ししてみたいと思います。

 

 

医療福祉学部長 吉川 眞

最終更新日:2014年11月5日